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コラム

サステナブルな街を作るレストランとは?

日本最大級のリユースデパート、コメ兵のオウンドメディアKÓMERU編集長の坊所が、オーガニッククルー代表取締役の森さんにお店でのオーガニックの取り組みやサステナブルな街作りについて伺いました。ファッションと食や暮らしを切り離すのではなく、オーガニックやサステナブルを日常生活に取り入れるヒントを一緒に見つけましょう!

【オーガニックに注目したきっかけ&ポートランドとの出会い】

KÓMERU編集長 坊所(以下、坊所):はじめにオーガニッククルーはどのような会社ですか?会社名に込めた想いやオーガニックに注目したきっかけを教えてください。

話す女性

オーガニッククルー代表取締役 森(以下、森):オーガニッククルーはオーガニックのライフスタイルの提案やレストランを運営する会社です。オーガニック普及率の低い日本にオーガニックを広めるため2008年に起業しました。社名はオーガニックの価値観に共感できる仲間(クルー)を増やし、世界中の人が笑顔で繋がる社会を作りたいという想いで名付けました。

私は元々調理師で、オーガニック先進国と言われるヨーロッパやオーストラリアなどを旅して様々な国の食文化を見てきました。その中でオーガニック後進国の日本でも生産者をサポートできる仕組みをもっと作りたいと思ったのがオーガニックに注目したきっかけです。

話す男性

坊所:様々な国を旅する中で影響を受けた街はありますか?

森:米国オレゴン州のポートランドです。ポートランドは様々なフードカルチャーの発信地で、ファーマーズマーケットが世界の模範になっているサステナブルな街として有名です。そんなポートランドで友人から紹介してもらったオーガニックレストランのオーナー「ジョン」は会ったその日にファームを案内してくれました。

彼のレストランへも食事に行き、ファーム・トゥ・テーブル(農場から食卓へ)という考え方に深く共感したことが、日本でオーガニックの取り組みをもっとやっていこうという確信になりました。この街と早い段階で出会えたことが今に繋がっていると思います。

米国オレゴン州ポートランド

【日本初上陸「sweedeedee (スウィーディーディー)」のサステナブルな街作りとは?】

スウィーディーディー店内

坊所:今回の取材場所でもあるスウィーディーディーはポートランドに本店があるお店ですか?

森:はい。このお店がある千葉県柏市は、内閣府から「環境未来都市」に選定されていて、特に「柏の葉エリア」はポートランドをモデルにした環境配慮型の街作りをしています。その街の中心になればとポートランドのお店を日本へ上陸させました。

店内のショーケース

坊所:このお店へ歩いて向かう途中、とても住みやすそうな街だなと感じました。どんな街作りをされているのですか?

話す女性

森:柏の葉は歩行者に優しい街や活気あるコミュニティ、街の賑わいなどを実現する先進的な取り組みが高く評価され、アメリカの国際的な環境認証「LEED」の街づくり部門で最高ランクの「プラチナ認証」を取得しています。

ポートランドは人口が増えたのにCo2が減った街ということでも有名です。柏の葉も今人口がどんどん増えていますが、例えば交差点を多くすることで車よりも自転車を使いたくなったり、歩きたくなります。散歩をしていると偶然友達に会ってお茶をしようとカフェに入ります。店前にテラス席を作ることで街が活き活きとし、街中にコミュニケーションが生まれます。歩くことで健康のためにも、自然とCo2を減らすことにも繋がるのです。

テラス

大事なことは1店舗だけで良いことをやるのではなく、隣の店も周りの店もみんなで地域を良くしていくことです。私たちも自然な街作りの一環として存在していて、発信地として街の一員になり一緒に街を作るという気持ちでいます。街が良くなればそれがサステナブルであり、ポートランドの街もそうやって広がっていきました。

話す男女

【オーガニックを自然に取り入れる仕組み】

坊所:スウィーディーディーはあまりオーガニックを謳っていないので気軽に入れる印象を受けました。オーガニックと全面に打ち出すことで身構えてしまう人もいると思うのですが、どのようにお考えですか?

森:重要なのはオーガニックやサステナブルな取り組みを難しい話にしないことです。環境問題もそうですが、難しい話をしたら全然広がっていきません。我々がやらなくてはいけないのは、サステナブルにもエシカルにも興味がない「0の人を1に変えていく仕組み」です。

例えば、楽しい場所で好きな仲間と食事を共にすることは普段の暮らしの中でできると思います。私たちはそのような場所を身近に作り、きっかけを提供することが役割だと思っています。サステナブルは人に押し付けるものではありません。オーガニックを普及するから来てくださいと伝えるのではなく、地域の人が喜ぶことを作っていくことが存在意義だと思っています。

店内の写真

そしてその中で環境に配慮した仕組み作りを継続して普及に繋げることが大切です。例えばオーガニック野菜を一人暮らしで消費する場合ニンジン1本が精一杯でも、お店ならお客様に料理として提供できるので、個人消費よりたくさん消費する事ができます。レストランをやること自体がオーガニック生産者を支える一番の仕組み作りです。

お店のフードとドリンク

他には平飼いの卵を使っていることを伝えたり、繰り返し使えるステンレスストローを使ったり、街中のレストランという立ち位置で自分たちができる選択をしています。いかに多くの人を0から1に変えられるかが、1人の100歩より100人の1歩になっていくのではないでしょうか。

店内で使用しているステンレスストロー

【オーガニックは食だけではない、両方やってみることが大切】

坊所:普段の暮らしの中でサステナブルを取り入れるコツはありますか?

森:すぐに取り入れられるのは自分が実践者になることだと思います。私の場合は子供と一緒に遊びながら日々自然との共生を学んでいます。何でもやってみないと分からないので、どちらが未来に良いか試行錯誤しながら身をもって体験することを大切にしています。大事なのは両方やってみることです。両方知らないと世界は見えてきません。

話す男性

食の人間だから食しか触らないのではなく、ハーブやコットンを育てて植物がどのように育つのか毎日土を触って観察しています。オーガニックは食だけと思われがちですが、コットンも土からできていてファッションにも繋がっています。

店で扱う食材がオーガニックなら、着るものもオーガニックとシンプルに言えた方が気持ち良いのでお店のエプロンもオーガニックコットンです。また、フードテキスタイルという廃棄される食材の残渣が染料のエプロンを使用しているので、エプロンの色は食材の色によってスタッフそれぞれ異なります。

オーガニックコットンのエプロン

店内には花を飾って春夏秋冬で変化していく様子を感じてもらえるような、生き物と共存していると分かる空間作りをしています。何を選択するにも地球にとって優しいかという視点が大事です。食とファッションや暮らしを切り離すのではなく、衣食住のオーガニックを伝える活動をしています。

店内に飾っている花

テラスの花

【地域を元気にしてLOVE&PEACEな街作りを】

坊所:最後に会社の今後の展望を聞かせてください。

森:私がこのお店をやっている意味は二つあります。一つは「働くスタッフのため」です。スタッフには飲食店で働くことが幸せであり誇りであってほしいし、人生の選択として誇示され、そこに意味を見出してもらえるようにしたいと思っています。

話す男女

私の5歳の時の将来の夢はレストランを開くことでした。幼少の頃の夢ってケーキ屋さんやパン屋さんなど、ほとんどが親との暮らしの中で身近に見てきたものが多いですよね。でも今は大人が作った社会のせいで、子供たちがその夢を諦めてしまうような生きづらい世の中になっています。だからこそ原点に帰って幼少期の夢を大切にしてほしいのです。

誰でも点と点を繋げていくと繋がる自分のストーリーがあります。次世代の子供たちがこの先の未来を描いていけるように、そのバトンを繋げていきたいと考えています。

もう一つのお店をやっている意味は「地域の人のため」です。住む場所の近くにコンビニがあるとどうしても利用してしまうように、街作りはそこに住む人の健康作りも担っています。食を提供することで地域の人が健康になっていくような未来を共に育てていくことが私たちのミッションです。

スタッフが毎日楽しく働ける環境を作ることと、お客さんが求めることを作っていくこと、これが一番の原点でありポイントだと考えています。この二つを続けることが地域を元気にしていくことにも繋がっていくと信じています。

スウィーディーディーのスタッフと森さん

ポートランドはアメリカで環境都市No.1と言われていますが、それを目指して作ったわけではありません。自ずと街を愛する人が増えたからこそ世界で住みたい街No.1にもなりました。私たちもポートランドのように互いを尊重し応援し合うLOVE&PEACEな街を作っていきたいと思います。

坊所:素敵なお話をありがとうございました!

文:大信田千尋

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KÓMERU編集長 坊所
サムネイル: KÓMERU編集長 坊所
日本最大級のリユースデパート・コメ兵のオウンドメディア「KÓMERU」の編集長。 賢くオシャレにサステナブルを楽しむ方法を日々発信中。 編集長の傍ら、KOMEHYO SHINJUKU WOMENにも勤務し、ハイブランドに精通したベテランスタッフとして活躍中。