サムネイル
コラム

サスティナブルなアート作品に熱視線。ガーナのスラム街の電子廃棄物が1500万円のアートになるまで

コメ兵初のリユースとサステナブルアートのコラボレーション店舗「KOMEHYO AOYAMA」にて、“MAGO GALLERY AOYAMA”を構えたアーティスト・MAGOこと長坂真護さん。電子廃棄物を利用したアートは一躍注目を集め1500万円の値が付くほどに。MAGOさんのアートが人々の心を強く揺さぶる秘密に迫ります。

スラム街の電子廃棄物をアートに。芸術家・MAGOとは?

電子廃棄物を使用したアート作品

先進国がガーナのスラム街に投棄した電子廃棄物を使い、アート作品を次々と発表しているMAGOさん。2017年にはいち路上アーティストでしたが、わずか数年で1500万円の価値がつくほどの作品を生みだすアーティストに。まずは、MAGOさんがそこに辿り着くまでの経緯を伺いました。

1枚の写真との出会いが、僕を変えました

インタビューに答えるMAGOさん

――現在、アーティストとして活躍しているMAGOさんですが、学生時代から絵を描くことを専門に学んできたのですか。

学生時代は、絵ではなく服飾関係に興味がありました。そのため、18歳の時、服飾系の専門学校へ入学しています。3年間皆勤賞を取るほど服飾の授業にのめり込み、自分はモノづくりが好きなんだと実感しましたね。

成績も良かったので、卒業後はパリへ留学してデザイナーになろうと思いました。ただ、留学にはお金がかかるので、そのための留学資金を貯めるためにホストクラブで働くことに。ところが、気づいたらナンバーワンホストになっていて、年収は一気に3千万円に。たくさんのお金を手に入れたことで自信がつき、パリへの留学を辞めてアパレル会社を起業しました。

しかしながら、そのアパレル会社は社員にだまされ倒産。しばらくは借金を返す日々が続き、2009年からは路上絵描きとしての活動を始めて、何とか毎日を食いつないでいました。

――そんなMAGOさんの生活は、1枚の写真との出会いで大きく変わったと伺っています。その写真はどんな写真で、見た瞬間、どのような感情を抱きましたか。

世界的な経済雑誌『Forbes』に掲載されていた写真で、子どもがゴミを抱えている写真でした。見た瞬間バリバリと電流が走ったというか…。言葉にできないような、魂に訴えかける何かがありました。この深刻なゴミの問題を調べていくうちにアフリカのガーナに集まっているらしいということがわかりました。既に海外には何度も足を運んでいたのですが、アフリカにはまだ足を踏み入れたことがなかったので、これを機に行ってみようと思い立ちましたね。

インタビューに答えるMAGOさん

ガーナのスラム街で目の当たりにした現実

――MAGOさんが訪れたガーナのスラム街・アグボグブロシーは、世界の電子廃棄物の墓場と言われている場所です。1日わずか500円の日当で先進国が捨てた電子廃棄物を必死に燃やしながら生きている人々が暮らす場所でもあります。この光景を実際に目の当たりにした時、どのような事を思いましたか。

最初に行った時は、目の前に広がる光景が本当に衝撃的で。これは何百億円もかけたハリウッドのセットなんだろうか、と思うくらい僕たちの日常からかけ離れた異次元の世界が広がっていました。地球上で子ども達が命を削りながら電子廃棄物をかき集めている・・・、同じ地球上で、キレイな公園で思いっきり遊んでいる子ども達がいる一方で、こんな暮らしが行われているというギャップがすごくて言葉を失いました。そして彼らの生活を犠牲に先進国の人間は利益を得ていると気付き、立ち直れないくらいショックを受けました。

Photo by Fukuda Hideyo

――「電子廃棄物でアート作品を作ろう」という発想に至ったきっかけは何かあったのでしょうか。

実はガーナのスラム街へ行く前から、パリでサスティナブルという概念に出会っていて。オーガニック化粧品を売っている知人に、この商品が売れると世界中に有機農園が増えていくんだと教えてもらいました。

そんな前知識もあったので、ガーナのスラム街で出会った子ども達をどうやったら救えるかと考えていた時に、電子廃棄物を画材にすることを思いつきました。電子廃棄物を絵の具として使えば現地からゴミが減るし、絵が世界中に広まれば、やがてはガーナのスラム街へ運ばれてくる電子廃棄物も減る。だから僕のやっていることは、サスティナブル・アートなんです。

ガーナを訪れた半年後には、スラム街に投棄された電子廃棄物を使ったアート作品をお披露目するためにガーナ展を開きました。そこで僕は絶対にアートでガーナのスラム街を救うと決意した。ガーナのスラム街・アグボグブロシーで見た衝撃を忘れて、何食わぬ顔で生きていくことはできなかったんです。

――電子廃棄物でアート作品を作り始めてから、わずか数年で1500万円の価値が付いています。いち路上アーティストだったMAGOさんの作品力を高めたのは何だと思いますか。

1500万円で絵が売れても、それがそのまま僕の実力だとは思っていません。僕の絵は単なる技術だけでなく「サスティナブルな活動」という思想背景があるからこそ価値がある。もしガーナのスラム街を救うというバッググラウンドがなかったら、僕の絵の価値は10分の1くらいの値段になるでしょう。そこを勘違いしちゃったら、自分がダメになると気を付けていますね。

アートのチカラで変わろうとしているスラム街

MAGOさんの作品が売れることで、現地にどんな変化が訪れ始めているのでしょうか。ガーナのスラム街・アグボグブロシーは、MAGOさんとアートのチカラで変わろうとしています。

単発の支援ではなく、持続可能な支援を

Photo by Fukuda Hideyo

――作品の売上で、最初はガーナのスラム街にガスマスクを届けたと聞いています。その後、学校や美術館の建設と規模が大きくなっていきましたが、なぜそうしようと思ったのですか。

学校を建設しようと思ったきっかけは、ある時、僕もとても可愛がっているガーナのスラム街の子のお父さんに、うちの子だけこっそり都会の学校へ通わせてくれないかと頼まれました。その頃、実は、その子どもをモデルにして描いた絵が、1500万円で売れていました。

でもガーナのスラム街にはたくさんの子どもがいるのに、その子だけ都会の学校へ通わせるのは違うなと思って。そこでスラム街に学校を作れば、皆が通えるし公平じゃないかと思い、学校を建設しようと思い立ちました。

インタビューに答えるMAGOさん

美術館を建設したのは、ガーナのスラム街の人に投棄されたゴミ拾いをする以外の雇用を作りたいと思って建設しました。ガーナのスラム街・アグボグブロシーには世界中からジャーナリストが来るのですが、彼らは皆写真を撮るだけで帰って行く。

でもそこに美術館作れば、訪れる人から入場料を徴収することができる。その収益はすべて現地の人に還元しています。最終目標は、電子廃棄物のリサイクル工場を建設し、ガーナのスラム街の人々を雇い、新しいライフスタイルが回っていくようにしたいと思っています。

アートによって変わる子どもたちの生活

――アートでうるおい始めた、現地の子どもたちの生活に変化は訪れていますか。

先ほど話に出た学校では、英語、算数などの科目に加えアートも教えています。子どもたちはアートを学んで絵を描き、できた作品は日本に持ち帰って僕が売っています。売上の一部は、子どもたちに還元するようにしています。

そのお金で携帯電話を購入して、インスタグラムに自分のアーティストページを作る子どもも現れました。僕の活動によって、子どもたちの生活も少しずつ変わってきていると感じています。

電子廃棄物アート、制作の裏側

アトリエで作品を眺めるMAGOさん

MAGOさんが生みだす、心揺さぶられる電子廃棄物アートはどのように制作されているのでしょうか。その制作の裏側に迫ります。

電子廃棄物がアートに生まれ変わるまで

電子廃棄物を使用したアート作品

――作品の構成はどのように考えていますか。

人を対象にした作品だと、その1人にフォーカスし、真正面からその人を捉えた構成にすることが多いですね。1人にフォーカスするのは、愛を持って被写体に向き合うと、その人だけに集中したいという気持ちからです。また、横顔ではなく正面の方がその人の感情やストーリーをしっかり伝えられると思うので、作品のほとんどが真正面からの構図になっています。

電子廃棄物を使用したアート作品

――電子廃棄物の組み合わせはどのように選んでいますか。意図的なのか、それとも直感で選んでいるのでしょうか。

組み合わせというか、どんな電子廃棄物を選ぶかに関しては、僕自身が好きなゲームのコントローラーや、PCのキーボードの破片などをよく選びます。

作品に使うには電子廃棄物は、現地の人が拾ったものを日本に送ってもらっているのですが、僕の好みを現地の人が知っているので、送られてくる電子廃棄物もガジェット系のゴミが多いです。

ガーナから送られてきた電子廃棄物

「KOMEHYO AOYAMA」とのコラボレーション

電子廃棄物を使用したアート作品

コメ兵初のリユースとサステナブルアートのコラボレーション店舗「KOMEHYO AOYAMA」店舗の2階に、“MAGO GALLERY AOYAMA”を構えることになったMAGOさん。今回のコラボレーションにかける想いを伺いました。

“MAGO GALLERY AOYAMA” への想い

インタビューに答えるMAGOさん

――高級ブランド品を取り扱うコメ兵とMAGOさんの作品、一見すると遠い存在に感じますが、両者は「サスティナブル」というキーワードで繋がっています。リユースアイテムを扱いサスティナブルにファッションを楽しむ仕組み作りに取り組むコメ兵と、「サスティナブル・キャピタリズム(持続可能な資本主義)」を掲げるMAGOさん。今回のコラボレーションに期待することは何でしょうか。

コメ兵さんの会社理念と僕の理念には、非常に近いものを感じます。僕は「サスティナブル・キャピタリズム(持続可能な資本主義)」を掲げて活動している。サスティナブルは単なる慈善活動ではなく、経済を動かしながら、事業としてできるものだと捉えている点が同じだなと。

コメ兵さんはブランドアイテムをリユースして、そこから生まれた価値を最大限に使う。単なる消費ではなく、良いものを直しながら何十年も使うというコメ兵さんの理念に共感します。

また、コメ兵さんの理念に賛同する人は、僕のやっていることにも興味を持ってくれる人だと思います。リユースやサスティナビリティに興味がある人が、僕のアートに出会って、活動を応援してくれたら嬉しいですね。

インタビューに答えるMAGOさん

「KOMEHYO AOYAMA」店舗概要

KOMEHYO AOYAMAは、既設利用やスケルトン部分を除く内装面積の98パーセントに、リユース建材や環境に配慮した素材を活用した「サステナブル仕様」の店舗です。

◆店舗名称:KOMEHYO AOYAMA
◆店舗所在地:東京都港区南青山5-4-30 南青山澁澤ビル1、2階
◆開業日:2021年2月26日(金)
◆営業時間:11:00~20:00※状況により短縮営業の可能性あり
◆休業日:水曜日

◆店舗案内:1F…買取リ・取り寄せ販売、2F…MAGO GALLERY AOYAMA
◆取扱品目:宝石・貴金属、時計、ブランドバッグ、ブランド衣料

※現KOMEHYO青山店(港区青山)は、2月23日(火)まで営業いたします。

writer profile
tina
サムネイル: tina